_季節のご挨拶>2009年1月

寒中お見舞い申し上げます(2009.01.13)

旧年中は格別のご厚情を賜り、有難うございました。

特に昨年のりんごは、「美味しいりんごだった」「送り先からとても喜ばれた」といったの声を、いつになく多くの方からお寄せ頂きました。
勿論、天候に恵まれたことはいうまでもありません。しかし、難易度は高くも美味しいものを生らせるという剪定技術、美味しい果実につながる肥料、収穫前の無化学農薬期間をサポートする葉面散布剤、これらもまた、この結果につながったのだと思っています。
こうした技術の習得や、決して安くはない農業資材の使用を含む、当園の栽培方法を支持・支援して下さった皆様に、御礼申し上げます。
元より、味や外観よりはむしろ、化学物質の使用を減らすことに重きを置いた栽培方法であり、何年かに一度の出来だったかも知れません。ですが、これからも、良い結果につながるよう努力を続けていきたいと考えています。

どうぞ宜しくご支援くださるようお願いいたします。

福蕨


これからの栽培方針─2009年

「環境負荷」は現在、農業が直面している課題の一つであり、各地域で負荷の低減に取り組む必要があるとされます。限られた土地を有効に、継続的に利用していけるような取り組みが求められています。ふくわらびでは、ささやかながらも、更なる剪定技術の習得、有機質肥料の使用、葉面散布剤などの補助資材の効果的な使用方法、そして「収穫前無化学農薬期間」(=減化学合成農薬)といった取り組みを継続して行います。

収穫前無化学農薬期間─収穫前、可能な限り長く、化学合成農薬を散布しない期間を設けること

りんごでは収穫前の一月半から三ヶ月間、桃では一ヶ月から二ヶ月の時間を、それぞれ空けるようにしています。収穫前無化学農薬期間を支えるに妥当な資材として、現在、「ボルドー液」や「硫黄」などを選択しています。
加え、いくつかの資材も検討しています。

カルシウム剤─pH値が非常に高いカルシウム剤

果実品質向上を狙った葉面散布剤なのですが、このカルシウム剤は病気に対しても一定の効果が期待できるそうです(病原菌が活性化するpH値との違いから)。今年は、ボルドー液に、本剤や、数年前から試用しているニームオイルなどの葉面散布剤を組み合わせた防除歴を、園地の一部で実験してみようと目論んでいます。
今年の実験はこれがメインになりそうで、もし少しでも効くとしたら、うれしい物になります。ひょっとしてあれに効かんかな、これに効かんかなと、コタツの中で想像だけは動いている。

ビコー(BIKOO)という果実袋─透明フィルム(ニ軸延伸ポリプロピレン)の果実袋

昨年、ビコーという果実袋を、減農薬試験圃場の一部で試用しました。袋による物理的な防虫効果への期待の他、素材が透明フィルムであることから、これまでの果実袋では危惧されていた化学合成農薬の問題が回避されると同時に、無袋栽培のような着色や味覚が期待できる資材だと考えて、購入しました。結果、防虫効果は勿論、得られたのですが、他の特徴として、果実が堅く、締まったようです。果汁少なめで、カチッとしたふじが収穫されました。桃では、硬くなりすぎて、軟化しなかったようです。使い方、収穫果実の取り扱い方によっては、可能性がありそうです。

これら資材の有用性を確認しながら、昨年、この紙面上でアナウンスした、減農薬りんごのオーナー制『5カウントりんご』『7カウントりんご』の具体化していきたいと考えています。

新品種─シナノゴールド

以前、「品種に勝る技術無し」という台詞をどこかで見聞きしたのですが、新品種があれば、植えたくなります。まずは一本、苗木を買ってみます。
シナノゴールドは、近年、全国的に、急激に増産されている品種の一つです。貯蔵力があることから、当園でも、二〜三月の出荷を考えて栽植し、一作年より、少しづつ出荷し始めました。
美味しかったり、その香りを気にされたり、評価はまちまちです。特に香りは、昔、春先に、木箱に籾殻詰めで買ってもらった紅い林檎を思い出します。当園の栽培方法では、香りが強調されすぎるのかも知れません。
香りが緩和される栽培方法、特別の貯蔵場所の確保、あるいは他品種に転換すること、等々、考えています。よろしければ、食味してのご感想をお寄せ下さい。今後の参考にしたく存じます。

※ シナノゴールドは、通常の品種混合の箱には入っていません。ご希望の方は特に申し付け下さい。


ジュースの原料

「ジュースは濃縮還元じゃないですよね?」このようなお問い合わせがございました。
青森県弘前市の加工業者によるりんご酢やりんごジュースの果汁原料表示の偽装、岐阜県内有機JAS認定第一号のお茶の偽装などが明らかになったことを思えば、当園のりんごジュースの宣伝ないし表示は、不十分であったなと反省しています。

原材料は全て、当園のりんごを使用しています。濃縮還元果汁も使用していません。

しっかりした味のジュースとするには、複数品種を混合すると良いとされます。酸味があるもの、甘みが強いもの、特徴に応じて、混合する品種を選び、割合を決めます。加工の前日にりんごを洗い、味が良い果実だけを選別をします。年々、その原料の質が上がっているような気がしています。原料の凝り具合は他人では真似できないような、というよりも趣味のように見えるかもしれません。
さておき、こうして準備した果実を、加工場に朝一番に持ち込みます。そうして加工場から一番に出てきたジュースが、皆様にお届けしている福蕨のりんごジュースです。

最近、りんごの自給率が六割だと知りました。生果が、中国や台湾に輸出され、高値で販売されているのだから、自給率が、実はこんなにも低い数字だったとは、思いもしませんでした。
国内のりんごジュースの内、国産は一割程度だそうです。ビン詰め以外のものは殆ど輸入となりましょうか。その七割が中国産だとか。(なお、中国のりんご生産量は世界一で、日本の三十倍。)
先のお問い合わせは、まさにこうした現状を反映してのものだったのかと気付かされました。
なお、一㍑二百円で販売されるりんごジュースは、工場を出る時は百円程でしょうか(すでに当園のジュースの加工代にも及びません)。となれば、原料のりんご果汁代は二十円位。それに水や添加物がたされますが、これでは国内で絞る加工代より安いことになります。この価格で、果たして安心安全な栽培や管理が出来るのか。不安を感じます。


果物の安全性は外観で測れるか

作物に求められる質や、その質を得るための方法は、生産者と消費者の関係において決まっていく。だから、食品に含まれる安心や安全というものも当然、生産者と消費者の、両者のやり取りの、積み重ねの結果として作られていくと考えています。
当園の果物の外観は、決して美しいとはいえません。ボルドー液の白い色が残り、また病害虫の痕も見られます。しかし、この外観と栽培方法のバランスは、過去三十数年に渡るお客様との関係により築かれてきたものですから、誇りを持って作り続けたいと思っています。

さて、近年、栽培時の化学物資の過剰な使用を制限する目的から、エコファーマーの認定制度ができました。当園では、右記のような思いから、化学物質の使用基準は疾うにクリアしていましたし、さして関心を払ってきませんでした。しかし、当園の白いりんごを指して「農薬を多用している証拠だ」(=危険だ)と、消費者に誤解を与えうる説明をする方が、エコファーマーの認定を受けておられるようです。そこで、どのような制度なのか、少しだけみてみました。

ところで、表面がきれいな果実は、果たして、ボルドー液を使用した白い果実と比べ、本当に安全なのでしょうか。例えば(いちごや桃ではよくありますが)、りんごでも、収穫前日まで散布が認可された化学合成農薬(殺菌剤)があります。この農薬も無色透明ですから、薬斑は残りません。よって、「果皮に汚れがないから安全だ」という見方には疑問が残ります。
エコファーマーの認定制度は、化学合成農薬の使用回数のみを制限します。農薬散布が例え収穫前日に行われたとしても、農薬登録の使用基準内であれば、減農薬栽培の農産物として認めるのです。
つまりこの制度には、一月以上前にボルドー液を散布した果実と、前日に化学合成農薬を散布した果実の、どちらがより安全か?という問いは存在しないのです。

この側面は、時に、消費者に対し、安全の指標を見えにくくします。
しかし、こうした制度の本当の恐ろしさは、それまで草の根で行われてきた取り組みやその成果を破壊しかねない点にあると考えられます。法制度そのものは実行犯になりえない。が、その制度の恩恵を受けようとするもの、行政に安全性を保証してもらい、それを背景に有利販売をしようとする排他的な生産者や業者によって、個々の生産者と消費者が築き上げてきた関係は崩され、結果、その関係が生み出していた安全は機能しなくなる。岐阜県内有機JAS認定第一号のお茶の偽装問題しかり。そして結局、儲けるのは誰か?
これは、杞憂でしょうか。

こういった制度を策定するにあたっては、それに先んじて、制度に対する信頼を支えるだけの技術、化学合成農薬に替わる技術(生物農薬や交信撹乱剤など)の開発に徹底して欲しいと、そう希望します。そうした技術があれば、生産者は利用するし、結果、安全な食品に近づくことができます。
そして生産者は、お互いの連携と、食の安全に向けた消費者との関係を生み出す地道な努力をしなければ。白いりんごだからと嫌な思いをすることもありますが、頑張らんとね!と思う年の初めです。

※ 大恩ある故・波多腰邦男氏は、二十年前に、こうした有機農業を巡る状況を危惧しておられました。


お詫び

昨年、お客様の住所録を整理するソフトを新しくし、データを移動しましたが、その際のミスで一部のお客様にご案内が届かなかったりと、ご迷惑をおかけしました。心よりお詫び申し上げます。