_季節のご挨拶>2008年1月

寒中お見舞い申し上げます(2008.01.13)

旧年中は格別のご厚情を賜り有難うございました。本年もよろしくお願いいたします。

昨年は冬の高温、春の低温という異常気象で、特に「むつ」「王林」などが極端な減収でした。ふじも花は大変少なかったのですが、収量はそこそこありました。しかし、全国的に暖かい秋で着色が進まず、収穫時期の判断に悩まされました。今年は極端な気温の変化が無いように願っております。

例年ですとここで、「まだりんごがあります」と書くところなのですが、今シーズンは旧年中にほぼ売切れてしまいました。重ねて感謝申し上げます。
りんごジュース、梅ジュース、りんごジャム等の加工品はございますので、どうぞよろしくお願い致します。

福蕨


これからの栽培方針

三年前には果樹園の縮小を考えていましたが、息子が帰ってきてやりだしたので、生産量は現状を維持します。そこで、今後の栽培方針はどうしたものかと考えています。
今までの方針だった減農薬を主にするのか、街には高い果実はあっても美味しい果実にはなかなか出会えなさそうなので、グルメの果樹園を目指すか、と迷います(この二点の両立は困難です)。今は、これまでを整理し、減農薬の歩みを少しずつ進められれば、と考えています。

一つの、減農薬の基本的な方針として、化学合成農薬の使用時期と収穫時期の間隔に配慮することを考えています。散布回数よりもむしろ、収穫までに農薬が分解する為の長い日数を確保することが大事なことと思っています。化学物質過敏症の方とお話しする機会を得て、このことを強く再確認させてもらいました。
桃で、化学合成農薬の使用を収穫50日前までとした果実が高額で売れている、という話を聞きましたが、当園の場合、晩生の桃はこれに当てはまります。今年は中生の桃もほぼ当てはまるようにと、防除設計を考えています。
具体的には、化学合成農薬の使用時期を、りんごでは7月下旬まで、桃では7月上旬までの使用とすることを目標とします。しかし例えば、8月にダニが発生した時に、ダニ剤をやりたくなります。昨年は化学合成農薬の代わりに天然資材を使いましたが、手間は3倍、お金は10倍かかりました。

もう一つ、別の形で、りんごの超減農薬栽培を考えています。

昨年、超減農薬の実験圃場では、花びらが散りかけた時(5月)、黒星病対策として一度だけ、化学殺菌剤を散布しました。それ以外には、葉面散布剤も忌避剤も、酢なども含め、一切使用しませんでした。それでも、見た目は悪くも、食べられるものが収穫できました。これは、木村秋則氏に、剪定や肥料の話を聞くことができたからだと思います。さて、農薬の減らし方がようやくわかった気分になってきたのですが、今までの木は、少々くたびれてきました。そこで、圃場を変え、新たな木でやってみる計画です。
化学合成農薬は、その有効成分の数や散布回数でカウントされ、そのカウント数が安全性の目安の一つに使われています。散布時期の制限は、個々の農薬登録に則ってなされるため、必ずしも有効な目安になるとは言い難いのですが。これは、そのカウント数を極端に減らし、7カウント、5カウントで栽培する方法です。
まだ、大まかですが、おおよそ次のようなことを考えています。

 超減農薬樹のオーナー制 『7カウントりんご』『5カウントりんご』(案)

  品種 つがる/ふじの選択可
  カウント数 7回と5回から選択可(化学合成農薬殺虫剤、殺菌剤の合計)
  散布時期 収穫前70日〜120日まで(化学合成農薬の散布時期)
  ※ボルドー液、害虫忌避剤、果実袋の使用は応相談

さて、昨年は、「いつもより美味しかった」と言うお客さんの声がありました。農薬を減らすと葉っぱが早く落ちたり、ダニがついたりして不味くなるので、少しでも「美味しくなるという肥料」でカバーしようと言う努力をしています。また、うまく葉が保護されると美味しいものが出来る可能性はあります。特に昨年は、美味しくなると紹介のあった肥料を多めに施し、葉を保護する天然資材もかなり使いました。肥料も葉を保護する資材も高額です。気が付いてみたら大変高い生産費になっていましたが、それらのお陰で、減農薬栽培の割には味が良くなったのかも知れません。
しかしながら、限界まで(味が落ちない程度まで)農薬を減らし、少しでも安全な果実を、と考えれば、当然ながら味が十分でない時もあります。よく「昔の味がする」といった声をお聞きしますが、当園の果実をよく言い表しているように思えます。

開墾した畑の話

昨年の寒中見舞いに書いた、隣の借りた畑。冬から夏にかけて開墾し、造成まで済ませました。当初はブルーベリーの摘み取り園(観光農園)にするつもりでしたが、思い直し、ふじのいろいろな系統と、黄色い品種(星の金貨、こうこう、はるか、等)を植えることにしました。また一列だけ、既存の梨(幸水や二十世紀)の木に洋梨を高接ぎしました。品種は、オーロラやコンフェレンス、ラ・フランスなどで、来年には生りだします。

りんごや洋梨、ブルーベリー

りんご早生種の品種構成を変えつつあります。つがるを少し減らします。代わりに少し収穫時期の遅い「つがる姫」が今年はなりだします。又、この時期の新品種をいくつか導入しつつあります。生りだすのはまだ三年ぐらい後です。
レッドゴールドは温暖化で日持ちが悪い、落果防止剤を使えないので収穫に大変手間の掛かるという作りたくない品種ナンバーワンですが。性懲りも無く、昨春、新たに苗木を作りました。枯れたむつの後に植える予定です。
昨年初めてシナノゴールドを混合の箱の中に入れてみました。匂いが気になる、と言う方がありました。少し強烈です。普通では他のものにまで移ることは無いのですが、少し気になっています。もし何かお気づきの事がありましたらお教えください。

洋梨はバートレット、オーロラ、コンフェレンス、ラ=フランスの4品種を主として作っていきます。洋梨のジャムも試作段階ですが、香りの良いものが出来そうです。今年は、少しでも販売できるほどに加工やら準備やら、と考えています。

ブルーベリーも少しは農薬が要るようです。開花期に雨が続くと、花腐れがあります。葉の落ちる病気もあります。カミキリムシやコウモリガが幹の根元を傷め、太くなった木が枯れてしまうこともあります。結局、殺虫剤、殺菌剤を使わなければならないのですが、何とか化学合成農薬を使わずにと考えています。


権利の囲い込みについて ─「知的財産権」など─

昔は果樹の新品種が作られると、間もなく苗木屋が苗を生産して売り出されたものである。新品種のうわさを聞くと、苗木屋が一般に売り出すのが待ちきれなくて、何とか人より早く手に入らないかとあせる人もいた。いずれにせよ、遅かれ早かれ苗木屋から入手できた。
しかし最近は、苗木を一般には売らず、特定の生産者だけが栽培出来るようにしている品種が幾つかある。

・品種育成者が自分以外の他人に殆ど生産権を認めないもの。
・権利を所有している所(企業など)が栽培者と契約して販売まで一元化しているもの。
・県の試験場が作った品種で、県外の生産を認めていないもの。

このような権利の囲い込みには、疑問に思うことがある。

農業は、食という基本的な営みを支える部分である。この囲い込みは、品種育成者の利益を守ることが目的といわれるであろうが、結局は消費者の不利益、負担としてかかってくると思う。品種育成者や技術開発者の利益の保護を、囲い込みとは別の形で行うことはできないのだろうか。

私が産地と言えない小さな産地でりんごを作り続けてこれたのは、長野や青森の先生方に教えていただいたからである。無償で競争相手に教え、考えを隠さず交換する姿を見て、こんな篤農家が日本の農業を作ってきたんだと感じたことが良くあった。品種や技術を作った人は、周りは儲けても、本人が儲けることは少なかったとも聞くし、それを人生の楽しみとされていたようである。
NHKのプロジェクトXで紹介された弘前の斉藤昌美氏は、自分の園地の被害を基に新技術を作り出し、また注目されかけた「ふじ」の枝を無償で配布した、神様のような人であったという。氏のように、情報を公開し、交換する姿勢が有する可能性を再認識する必要がある。

権利の囲い込みを行う理由の一つに「農業の国際化に対抗するため」と言われることがある。囲い込みが進めば、品種を育成しない生産者や県、国は、脱落する可能性が生じてくる。そもそも、農業こそ他国の農業者をつぶすようなことを考え直さなければと思う。お互いの国の品種や技術を交換し、生産現場の状況が向上することは嬉しいことだ。

農業に平和憲法九条の精神が欲しい。